シソ科ラショウモンカズラ属の多年草
クズやサルナシのつるで編んだ「祖谷のかずら橋」に名があるように、「カズラ」はつる性の植物を指す。花の時期にはよく判らないが、花後群生が広くなった頃に、ラショウモンカズラの茎をたどると、確かにつる状につながっているのが判る。
「平安中期の武将であった渡辺 綱(わたなべ の つな)が、京都の一条戻橋で鬼の腕を切り落とした」とされる逸話が古くから伝わる。この場面を平安京の正門「羅城門(らせいもん)」に移し演じられたのが、謡曲(能)の「羅生門」。
命名者はこの謡(うたい)が気に入っていたと見える。
ラショウモンカズラの花冠を、この武勇伝の「切り落とされた鬼女の腕に見立てた」と聞くと、何となく蕾や花がそのように見えてくるから不思議。更に唇型に開いた花の下側に生えている毛も、鬼の連想を増幅させ不気味に感じられてくる。
渡辺綱が「ラショウモン」で切り落した鬼の腕に似た花を咲かせる「カズラ」状の草が「ラショウモンカズラ」
年若いラショウモンカズラは、色も形もやさしいく可愛さも残るが、年を経るに従って厳つく色濃くなり、「毛むくじゃらな鬼の腕」を想像させる大きな花冠を着ける。シソ科の特徴でもある四稜の茎の角もハッキリし、シソ科特有の芳香も強くなってくる。
「下人の行方は、誰も知らない」で終わる、芥川龍之介の小説「羅生門」は、平安時代の説話集「今昔(こんじゃく)物語集」の一話から想を得た物で、他にも「薮の中」「鼻」「芋粥」なども同説話集を参考にしているのだそうだ。その中でも「羅生門」と特に「薮の中」は、ベネチア国際映画祭でグランプリを受章し、日本の映画を世界に知らしめた、黒澤明監督の映画「羅生門」の原作となった事でも知られる。




